「稼げないドライバーが陥る3つの罠」というテーマで、別の媒体にエッセイを書いた。
罠の正体は、走り方・時間管理・アプリへの抵抗感——いずれも「なんとなく感覚でやってきたこと」だ。では、なぜ感覚は裏切るのか。このブログではその問いにデータで答えたい。
「曜日は関係ない」は本当か
長く乗務していると「曜日より時間帯」「季節より天気」など、自分なりの感覚ができてくる。だが実際のデータはどうか。
239乗務(2024年6月〜2026年2月)の曜日別平均売上がこれだ。

| 曜日 | 平均売上 | 乗務数 |
|---|---|---|
| 月曜 | 74,619円 | 36 |
| 火曜 | 81,012円 | 34 |
| 水曜 | 84,493円 | 32 |
| 木曜 | 80,415円 | 34 |
| 金曜 | 90,603円 | 32 |
| 土曜 | 81,575円 | 37 |
| 日曜 | 74,241円 | 32 |
金曜と月曜・日曜の差は約16,000円。
同じ18〜20時間乗務して、曜日だけで16,000円の差が出る。月4〜5乗務ある金曜をどう使うかで、月間売上が6〜8万円変わる計算になる。
「今日は月曜だから低くて当然」と諦めるのか、「月曜の中でどう動けば上を取れるか」を考えるのか。出発点は「自分の数字を知っているかどうか」だ。
時間帯と距離の関係
次に時間帯別のデータ。7,392配車の乗車時刻を5つのブロックに分けて集計した。
| 時間帯 | 件数 | 平均距離 |
|---|---|---|
| 深夜(0〜5時) | 671件 | 6.15km |
| 早朝(6〜9時) | 1,068件 | 4.47km |
| 昼(10〜15時) | 3,294件 | 4.20km |
| 夕方(16〜19時) | 1,653件 | 3.74km |
| 夜(20〜23時) | 623件 | 6.49km |
件数が最も多いのは昼(3,294件)だが、平均距離は4.20kmと最短クラス。深夜・夜は件数が少ない代わりに距離が長い。
「昼は拾いやすいから昼を攻める」か、「夜の長距離を狙う」か——どちらが正解かはドライバーの乗務スタイルや体力によって変わる。ただし、どちらが自分に向いているかを知るには、ログが必要だ。
「実車率を上げれば稼げる」は単純すぎる
業界でよく言われるのが「実車率を上げろ」というアドバイスだ。確かに理屈はわかる。走っている時間のうち、客を乗せている割合が高いほど効率がいい。
ただ、私のデータを見ると少し複雑な話になる。
239乗務を実車率の高低で二分して売上を比較した。
| グループ | 実車率(平均) | 平均売上 |
|---|---|---|
| 上位10乗務 | 59.8% | 79,134円 |
| 下位10乗務 | 45.8% | 71,608円 |
| 差 | 14ポイント | 7,526円 |
実車率が高いほど売上も高い傾向はある。だが相関係数は0.114——ほぼ無相関に近い。
実車率を上げても、必ずしも売上は上がらない。
なぜか。短距離を大量に拾えば実車率は上がるが、メーター単価は下がる。逆に長距離1本で実車率が低くても売上は稼げる。「何をどこで何時に拾うか」の組み合わせが結果を決めるのであって、実車率は一つの指標に過ぎない。
「感覚」が機能しない本当の理由
ここまでのデータを整理すると、こういうことになる。
- 曜日だけで1乗務あたり最大16,000円の差が出る
- 時間帯によって件数と単価のバランスが大きく違う
- 実車率を上げるだけでは売上の改善につながらない場合がある
これだけの変数が絡み合っている中で、「感覚」だけで最適解を見つけるのは難しい。それ自体は悪いことではない。問題は、感覚が外れていても気づけないことだ。
「今日はなんか調子悪かった」で終わって、翌乗務に引き継がれない。自分がどの時間帯で落としているか、どの曜日で稼げているかが蓄積されない。だからいつまでも同じパターンを繰り返す。
ログを取ることが最初の一歩
改善の前提は「現状把握」だ。
私が239乗務のデータを分析できたのは、会社の日報PDFをOCRで取り込んで数値化したからだ。その作業を通じて、「金曜が強い」「深夜は長距離傾向がある」「実車率と売上の相関は弱い」という事実が初めて見えた。乗務中の体感では気づけなかったことばかりだ。
ただ、PDFをOCRで処理するのは一般のドライバーには現実的ではない。
Taxi Labを開発している理由はここにある。
日々の乗務データを入力するだけで、自分の売上パターン・時間帯傾向・曜日効果が自動で可視化される。「自分がいつ・どこで落としているか」をスマホで確認できるようにする。感覚をデータで検証できる環境を、全ドライバーに届けたい。
まだ開発中だが、このブログでは引き続き自分の分析データを公開しながら、アプリの設計思想も合わせて発信していく。
まとめ
- 曜日だけで1乗務最大16,000円の差が生まれる
- 時間帯によって「件数型」か「単価型」かが変わる
- 実車率と売上の相関は0.114——実車率だけを追うのは不十分
- 感覚の問題は「外れていても気づけないこと」
- 改善の出発点は、ログを取って自分のパターンを把握すること
使用データ: 個人の運転日報PDF(OCR抽出)/ 分析ツール: Python(pandas・matplotlib)